2026.02.24
床に転がる。叫ぶ。物を投げる。
突然スイッチが入ったように、子どもが崩れる。
周りの目が刺さる。自分の心臓がバクバクする。
「どうしてこんなことで?」
「さっきまで普通だったのに」
「私の育て方が悪いの?」
——誰にも言えない。誰もわかってくれない。
そんなあなたに知ってほしいことがあります。
パニックも、かんしゃくも、こだわりも、「しつけの問題」ではありません。
そして、「甘え」を育てると、これらは消えていきます。
「甘えさせすぎじゃないの?」と思うかもしれません。
でも、違うんです。
これは、科学的な根拠に基づいた、発達支援の方法なのです。
まず、理解してほしいことがあります。
発達障害の子どもたちが見ている世界は、私たちとは全く違います。
例えば、スーパーマーケット。私たちにとっては日常的な場所です。
でも、発達障害の子どもにとっては違います。
これらすべてが、同時に、同じ強さで脳に流れ込んでくるのです。
私たちの脳は、自動的に「重要な情報」と「どうでもいい情報」を選別しています。
でも、発達障害の子どもは、この「選別」ができません。
すべての情報が、全力で脳を刺激する。
想像してみてください。10個のラジオを同時に大音量で流している部屋にいる状況を。
それが、発達障害の子どもたちが日常的に体験している世界なのです。
だから、パニックになるのです。
これは「わがまま」ではなく、SOSなのです。
「いつもと同じ道を通らないとパニックになる」
「同じ服しか着ない」
「食べ物を並べないと気が済まない」
こうした「こだわり行動」も、決して「わざと困らせよう」としているわけではありません。
発達障害の子どもたちは、世界が混沌として見えています。
何が起こるかわからない。
何が安全で、何が危険かもわからない。
そんな中で、唯一「これは安全だ」「これは予測できる」と思えるのが、「いつもと同じ」ことなのです。
こだわりは、不安を和らげるための、子どもなりの工夫なのです。
ここで、重要な事実をお伝えします。
私たちの研究では、自閉症スペクトラム障害の子どもたちとその母親延べ5000組以上を支援してきました。
その結果、わかったことがあります。
「甘え」が育つと、パニック・かんしゃく・こだわりが、自然に減っていく。
なぜでしょうか。
定型発達の子どもは、生後間もなくから、母親との関係の中で「この世界は安全だ」と学んでいきます。
母親が、赤ちゃんが泣いたら駆けつける。お腹が空いたらミルクをくれる。
不快だったら抱っこしてくれる。
こうした「ほぼ完全な世話」によって、赤ちゃんは「世界は安全だ」「困ったら助けてくれる人がいる」と学ぶのです。
この「安心」こそが、すべての発達の土台です。
でも、発達障害の子どもは、この「安心」を持ちにくいのです。
なぜなら、母親と子どもの間に「感性のずれ」があるから。
母親は、自分の感覚をもとに「これが心地いいはず」と思って世話をします。
でも、子どもにとっては、その世話が心地よくないこともあるのです。
こうして、「世界は安全だ」という感覚が育たないまま、時間が経ってしまうのです。
だから、もう一度、「安心」を育てる必要があるのです。
それが「甘え」なのです。
「甘えを育てる」と言っても、何をすればいいのでしょうか。
私たちの研究と実践から、効果的だった方法をお伝えします。
「うちの子、もう3歳なのに」「小学生なのに」と思うかもしれません。
でも、年齢は関係ありません。
発達段階で考えるのです。
甘えの発達が1歳代で止まっているなら、1歳代のかかわりをするのです。
具体的には:
添い寝と身体マッサージ
夜、寝る時に、子どもの隣に寝転がって、背中や手足を優しくなでる。
子どもが嫌がらない程度の強さで、ゆっくりと。
「気持ちいいね」「お母さんここにいるよ」と、優しく話しかけながら。
最初は嫌がるかもしれません。
でも、続けていくと、子どもは徐々にリラックスするようになります。
絶えず優しく話しかける
子どもが反応しなくても、構いません。
「今日は暑いね」「お花が咲いてるね」「お母さん、〇〇ちゃんと一緒で嬉しいよ」
実況中継のように、優しく話しかけ続けます。
子どもは、言葉の意味よりも、お母さんの声のトーン、温度を感じ取っています。
スキンシップを増やす
手をつなぐ。頭をなでる。肩に手を置く。
子どもが嫌がらない範囲で、できるだけ身体的な接触を増やします。
触覚過敏がある場合は、無理に触らず、子どもが受け入れられる方法を探します。
例えば、服の上から触る、軽くトントンする、など。
遊びの中で、母親と子どもの「楽しい」を共有することが大切です。
ムーブメント教育
バランスボール、トランポリン、マット運動など、身体を動かす遊びを通じて、母親と一緒に楽しむ経験を積みます。
「せーの、ジャンプ!」と言いながら一緒にジャンプする。
子どもが成功したら、大げさなくらい褒める。
「すごい!」「できたね!」と笑顔で。
手遊び歌
「むすんでひらいて」「いとまきまき」など、簡単な手遊び歌を一緒にやります。
最初は、子どもは見ているだけかもしれません。
でも、母親が楽しそうにやっていると、真似したくなります。
真似できたら、それがどんなに不完全でも、「できたね!」と認めます。
子どもの自発性を大切にする
母親が一方的に教えるのではなく、子どもがやりたいことに付き合います。
子どもがブロックを並べているなら、一緒に並べる。
子どもが走っているなら、一緒に走る。
「お母さんも一緒にやりたい」「楽しいね」と、共有する姿勢を見せます。
発達障害の子どもは、「どうやって甘えればいいか」がわからないことがあります。
だから、教えるのです。
「やって」と言えるようにする
何かができない時、「やって」と言えるように練習します。
例えば、ジュースのフタを開けるのが難しい時。
「開けて、って言ってごらん」と促し、子どもが「開けて」と言ったら、すぐに開けてあげます。
「言えたね!」と褒めてから、「どうぞ」と渡します。
これを繰り返すことで、「言葉で頼めば、助けてもらえる」と学びます。
抱っこを求める方法
抱っこしてほしい時、「だっこ」と言う、または手を伸ばす、という方法を教えます。
子どもが近くに来たら、「だっこしたい?」と聞き、子どもがうなずいたり、手を伸ばしたりしたら、すぐに抱っこします。
目を合わせる練習
無理に目を合わせさせるのではなく、自然に目が合う機会を増やします。
子どもの目線の高さにしゃがみ、子どもが好きなものを持って、「見て」と優しく声をかけます。
子どもが一瞬でも目を向けたら、「見てくれたね!」と笑顔で反応します。
「甘えを育てる」と言っても、しつけをしないわけではありません。
ただ、安心があるからこそ、しつけが効くのです。
褒めることの科学
望ましい行動をしたら、即座に(理想的には0.5秒以内に)褒めます。
「すごい!」「できたね!」「お母さん嬉しい!」
褒め言葉だけでなく、笑顔、ハイタッチ、シールなど、子どもが喜ぶ方法で強化します。
プロンプトとスモールステップ
大きな課題は、小さなステップに分解します。
例えば、「片付け」という課題。
最初は、「この積み木1個だけ、箱に入れて」と頼みます。できたら褒める。
次は、「2個入れて」。できたら褒める。
徐々に、全部片付けられるようになります。
最初は、手を添えて一緒にやってもいいです(プロンプト)。
徐々に手を離していきます。
視覚的に示す
言葉だけではわかりにくいことも、絵や写真で示すとわかりやすくなります。
「歯磨き→パジャマ→絵本→寝る」という流れを、イラストで示します。
子どもは、「次に何が来るか」がわかると、安心します。
では、なぜ甘えを育てると、パニック・かんしゃく・こだわりが消えるのでしょうか。
私たちの研究では、以下のような変化が確認されました。
甘えが育つと、子どもの中に**「自己の核」**ができます。
「自分は自分」「ここにいていい」「守ってくれる人がいる」という感覚。
この核があると、外からの刺激を受け止める力が育ちます。
研究では、甘えが育った子どもたちは、
という変化が見られました。
世界が「安全だ」とわかると、刺激は「恐怖」から「情報」に変わるのです。
安心感が育つと、「いつもと同じ」でなくても大丈夫になります。
なぜなら、「何か違っても、お母さんが助けてくれる」とわかるから。
研究では、
という変化が報告されました。
こだわりは、不安から生まれます。安心が育つと、こだわりは自然に減っていくのです。
甘えが育つと、子どもは母親の言葉を受け入れるようになります。
なぜなら、「お母さんは自分を守ってくれる人」「お母さんの言うことは、自分のためになる」とわかるから。
研究では、
という変化が見られました。
これは、「しつけができるようになった」のではなく、母親との信頼関係が育った結果なのです。
安心感が育ち、刺激に慣れる力がつき、言葉で伝えられるようになると、パニックとかんしゃくは自然に減っていきます。
研究では、療育教室に通い始めてから6ヶ月後、
という結果が出ました。
母親たちからは、
「スーパーに行けるようになった」
「外食できるようになった」
「公園で他の子と遊べるようになった」
という声が聞かれました。
これが、最も大きな変化かもしれません。
甘えが育つと、子どもは母親を求めるようになります。
母親たちからは、
「初めて『ママ』と呼ばれた時、涙が出ました」
「『だっこ』と言ってくれた時、嬉しくて嬉しくて」
「やっと、母親として求められていると感じられました」
という声が聞かれました。
母親が幸せになると、子どももさらに安心します。
この好循環が、子どもの発達をさらに促していくのです。
ここまで読んで、「やってみよう」と思ってくださったあなたへ。
いくつか、大切なポイントをお伝えします。
甘えの発達は、段階を追って進んでいきます。
最初は変化が見えないかもしれません。
でも、子どもの中では、確実に何かが育っています。
焦らず、ゆっくり、続けてください。
私たちの研究では、変化が見え始めるのは、早い子で1ヶ月、遅い子で3ヶ月でした。
でも、その後の変化は、驚くほど大きなものでした。
毎日完璧にできなくてもいいのです。
疲れた日は、添い寝だけでもいい。
忙しい日は、「お母さん、〇〇ちゃんのこと大好きだよ」と言うだけでもいい。
続けることが大切です。
大きな変化を待つのではなく、小さな変化に気づいてください。
そうした小さな変化が、大きな成長につながっていきます。
一人で抱えなくていいのです。
あなたをサポートしてくれる場所があります。
遠慮せず、頼ってください。
パニック・かんしゃく・こだわりは、「しつけの問題」ではありません。
それは、子どもが感じている恐怖と不安の表れです。
「甘え」を育てることで、その恐怖と不安が和らぎ、パニック・かんしゃく・こだわりは自然に減っていきます。
具体的には:
その結果:
年齢は関係ありません。
今からでも、遅くありません。
焦らず、ゆっくり、続けてください。
そして、小さな変化を、一緒に喜んでいきましょう。
今日も、嵐を乗り越えたあなたへ。
お疲れさまでした。
あなたは一人じゃない。
わかっている人が、ここにいます。
一人にしない。それが、私の支援です。
この記事は、自閉症スペクトラム障害児とその母親50組以上への支援と研究に基づいています。
詳しくは、書籍『発達障害の子のアマトレのススメ』をご覧ください。

療育教室では、個別相談も受け付けています。
あなたのお子さんに合った、具体的な方法を一緒に見つけていきましょう。
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