お役立ち情報INFORMATION
-
2026.10.22
かんしゃくへの対応を学んだのに、家でうまくいかないとき
「予告するといいと聞いて、試している」「気持ちを受け止めているつもりなのに、毎日同じことでぶつかる」 対応を学んでも、家庭では思うようにいかないことがあります。そんなときは、知識をさらに増やす前に、どの場面で困っているのかを整理してみませんか。 まずは一つの場面を選ぶ 朝の着替え、お風呂、ゲームの終了、宿題。全部を同時に変えようとすると、何が役立ったのかが見えにくくなります。 まずは「ゲームを終えるとき」など、一つの場面を選びます。その前に何をしていたか、どんな言葉をかけたか、どれくらい続いたかを、短くメモしてみてください。 気持ちを決めつけず、体調や環境も見る 「わざと困らせている」「甘えている」と決める前に、別の可能性も考えます。 ・終わりが突然で、見通しが持てなかった?・疲れていて、切り替える余裕がなかった?・「あと少し」「手伝って」を伝えにくかった?・音や明るさ、体調が負担になっていた? これは原因を言い当てるためではなく、確かめるための問いです。NICEの自閉症支援ガイドラインでも、行動の背景にある身体的な問題、コミュニケーションや環境などを評価することが重視されています。 家で続けられる変更を一つ選ぶ 予告をする、やることを見える形にする、刺激を減らす、助けを求める方法を用意する。どれも、すべての子に同じように合うわけではありません。 子どもの理解やその場面に合わせて、一つ選んで試します。そして「誰が」「いつ」「どうするか」まで決めると、家族で共有しやすくなります。 子どもの変化と、家族の負担を一緒に振り返る 2026年に公表されたオンライン保護者支援の研究では、子どもの行動に加え、家族のコミュニケーションや暮らしの状態にも目が向けられています。コーチングを加えた支援で家族機能への利益が示唆された研究もありますが、参加継続者を中心とする探索的解析であり、「伴走すれば必ずよくなる」とはいえません。 家庭での振り返りには、次のような視点を取り入れられます。 ・かんしゃくの回数や、落ち着くまでの時間はどうだったか・親の疲れは増えていないか・家族で対応を共有できたか・無理なく続けられる方法だったか 親の負担が増えすぎるなら、計画を見直すことも必要です。 わが家に合う対応を整理したい方へ 発達支援教室クローバーの「アセスメント&アドバイス」では、ご家庭の困りごとを相談できます。「何から変えたらよいか分からない」「学んだ対応が家では使いにくい」という方は、まず状況を一緒に整理しましょう。 うちの子の問題を整理したい方は、アセスメント&アドバイスへ。https://hattatsu-clover.com/soudan/ ※強い自傷・他害、けが、急な行動変化、痛みや病気の疑いがあるときは専門家への確認が必要です。安全確保と医療・専門的な評価を優先してください。 参考資料:McCrossinら(2026)https://doi.org/10.1002/aur.70334 / NICE CG170 https://www.nice.org.uk/guidance/cg170作成日:2026-10-02 JST
-
2026.10.20
ジョイントアテンションとは?会話・友達関係につながる「一緒に見る力」
「言葉を増やすには、何をしたらいいですか?」 「人に興味がないように見えます」 「一人遊びはできるけれど、一緒に遊ぶのが難しいです」 そんな相談の中で、とても大切になる力があります。 それが、 ジョイントアテンション(共同注意) です。 難しそうな言葉ですが、 簡単に言えば、 「誰かと一緒に同じものを見る力」 です。 ただ同じ方向を見るだけではありません。 「私も見ているよ」 「あなたも見ているね」 と、お互いに共有していることがポイントです。 例えばこんな場面です 子どもが犬を見つけます。 犬を見る。 お母さんを見る。 また犬を見る。 指を差して、 「ワンワン!」 と言う。 お母さんも、 「いたね!」 と犬を見る。 これがジョイントアテンションです。 子どもと大人が、 同じものについて気持ちや興味を共有しています。 なぜジョイントアテンションが大切なの? 言葉は、 物の名前を暗記するだけで育つわけではありません。 例えば、お母さんが空を指差して、 「飛行機!」 と言ったとします。 子どもが、 お母さんの指差しを見る。 その先を見る。 飛行機を見る。 「飛行機」という言葉を聞く。 こうして、 言葉と対象がつながります。 つまりジョイントアテンションは、 人から情報を受け取るための土台 でもあります。 American Academy of Pediatricsも、共同注意を、後のコミュニケーションや社会的関係につながる重要な基礎的能力と位置づけています。 ジョイントアテンションには2つの方向がある ①相手についていく お母さんが、 「あっ!」 と指差す。 子どもがその方向を見る。 これは、 相手の共同注意に応じる力 です。 ②自分から相手を誘う 子どもが面白いものを見つける。 お母さんを見る。 指差す。 「見て!」 と言う。 これは、 自分から共同注意を始める力 です。 こちらは特に、 「これ面白いよ」 「一緒に見よう」 という気持ちの共有に関係します。 「要求の指差し」と「共有の指差し」は少し違う 例えば、 棚のお菓子を指差す。 これは、 「取って」 という要求かもしれません。 一方、 空を飛んでいる飛行機を指差して、 お母さんの顔を見る。 これは、 「見て!」 という共有です。 どちらも大切なコミュニケーションですが、 目的が違います。 ジョイントアテンションが育つと何につながる? ①言葉 人が見ているものに注意を向けられると、 言葉の意味を学びやすくなります。 ②やり取り 見る。 相手を見る。 また物を見る。 という行き来は、 後の、 話す。 聞く。 返す。 というコミュニケーションにもつながります。 ③遊び 一緒に車を見る。 一緒に転がす。 笑う。 また遊ぶ。 こうした共有から、二人遊びが育っていきます。 ④友達関係 友達関係では、 「相手は何を見ている?」 「何に興味を持っている?」 「今、みんなは何をしている?」 という力が必要になります。 ジョイントアテンションは、こうした社会的なやり取りの基礎の一つです。 ジョイントアテンションが弱いと、どう見える? 例えば、 ・一人で遊んでいることが多い・「見て!」が少ない・指差しが少ない・大人が指差しても見ない・面白いものがあっても人に知らせない・人の顔と物を見比べることが少ない といった姿があります。 ただし、 これだけで自閉症と判断することはできません。 発達全体やコミュニケーション、行動などを総合的に見る必要があります。 家庭でできること① 子どもの興味に大人が入る まず、 大人が見せたいものを見せるのではなく、 子どもが今見ているものに入ります。 車を走らせているなら、 横に座る。 同じ車を見る。 「ブーン」 と声を添える。 子どもがこちらをちらっと見たら、 笑顔で返す。 「大人を見ると楽しいことが続く」 という経験を作ります。 家庭でできること②「見て」を増やす 面白いものを見つけたら、 「あ!」 「見て!」 と指差します。 ただし、 無理に顔をこちらへ向けたり、 「こっち見て!」 と何度も要求する必要はありません。 子どもが興味を持ちやすいものから始めます。 家庭でできること③ 子どもの「見て」にしっかり応える 子どもが、 物を持ってくる。 指差す。 こちらを見る。 そんなときは、 「ほんとだ!」 「大きいね!」 「動いた!」 と返します。 「人と共有すると楽しい」 という経験を積み重ねます。 家庭でできること④ 楽しいやり取りを繰り返す くすぐり。 いないいないばあ。 シャボン玉。 ボール。 歌。 子どもが好きな活動の中で、 大人を見る。 活動を見る。 また大人を見る。 という行き来が生まれやすくなります。 大切なのは「目を合わせる訓練」にしないこと ジョイントアテンションというと、 「目を合わせなければ」 と思うことがあります。 でも目的は、 アイコンタクトそのものではありません。 目的は、 「一緒に楽しい」 「一緒にびっくりした」 「これ見て!」 という共有です。 視線だけではなく、 指差し。 身振り。 声。 体の向き。 さまざまな方法があります。 ジョイントアテンションと発達支援 自閉スペクトラム症の幼児を対象にした研究では、保護者を介した共同注意・遊びへの支援によって、joint engagementや共同注意行動が改善したRCTも報告されています。 AAPも、保護者が日常の遊びの中で子どもの興味に入り、共同注意や双方向のやり取りを促す方法を紹介しています。 大切なのは、 特別な教材を使うことだけではありません。 毎日の遊びの中に、人と共有する経験を増やすことです。 まとめ ジョイントアテンションとは、 単に同じものを見る力ではありません。 「あなたも見ている。私も見ている。それを一緒に楽しんでいる」 という共有の力です。 この力は、 言葉。 コミュニケーション。 遊び。 友達関係。 につながる大切な土台の一つです。 だから、 「言葉を言わせよう」 とする前に、 「一緒に見る」 「一緒に楽しむ」 「子どもの興味に入る」 という関わりを増やしてみてください。 発達支援教室クローバーでは、 指差しだけを見るのではなく、 「人を見る?」 「共有する?」 「要求はできる?」 「大人の働きかけについてこられる?」 など、実際のやり取りを細かく見ます。 そして、 今のお子さんに何を増やすと、次の発達につながるのかを整理します。 → 発達支援教室クローバー「アセスメント&アドバイス」へ 参考資料 American Academy of PediatricsJoint Attention: What Is It and Why Is It Important? American Academy of PediatricsASD—Joint Attention Skills American Academy of PediatricsIdentification, Evaluation, and Management of Children With Autism Spectrum Disorder
-
2026.10.18
甘え下手な子とは?お母さんに甘えたいのに甘えられない子の特徴
「お母さんのことは好きなはずなのに、あまり甘えてこない」 「離れると気にしているのに、そばに行くと知らん顔をする」 「抱っこしようとすると逃げるのに、お母さんがいなくなると探している」 そんな子がいます。 一見すると、 「一人で平気な子」 「甘えない子」 に見えるかもしれません。 でも中には、 甘えたくないのではなく、“甘え方が分からない”子 もいます。 今回は、そんな「甘え下手な子」について考えてみます。 甘えることも、一つのコミュニケーション 赤ちゃんや小さな子どもは、 泣く。 近づく。 手を伸ばす。 見つめる。 声を出す。 抱っこを求める。 などの方法で、 「来て」 「助けて」 「そばにいて」 という気持ちを伝えます。 そして大人がそれに応える。 このやり取りを何度も繰り返しながら、 子どもは、 「困ったときは人を頼っていい」 という経験を積んでいきます。 ところが、発達特性などによって、このやり取りが少し分かりにくい子もいます。 甘え下手な子に見られること 例えば、 ・お母さんが離れると気にするのに、自分から追いかけない・抱っこしてほしそうなのに、「抱っこ」と言わない・困っていても助けを求めない・そばに来るのに、すぐ離れていく・お母さんを見ているのに、見ていないふりをする・甘えたい場面で、ふざけたり怒ったりする・一人でできないのに、「自分でやる」と強く拒否する といった姿があります。 ただし、こうした行動だけで「愛着に問題がある」と判断することはできません。 大切なのは、 その行動の背景を考えることです。 理由① 甘え方そのものが分からない 子どもは自然に甘えるもの、と思われがちです。 でも実際には、 「助けて」 「一緒に来て」 「抱っこして」 「そばにいて」 と人に働きかけることも、コミュニケーションです。 言葉や身振りで人に要求することが難しい子では、 甘えたい気持ちがあっても、 どう伝えればいいのか分からない ことがあります。 その結果、 泣く。 怒る。 物を投げる。 離れた場所から見ている。 といった別の行動になって現れることもあります。 理由② 人とのやり取りそのものが分かりにくい 発達特性のある子の中には、 相手の表情を見る。 自分から視線を送る。 相手の反応を待つ。 相手と気持ちを共有する。 といった双方向のやり取りに難しさがある子がいます。 この場合、 お母さんへの愛情がないのではありません。 人とのつながり方が少し分かりにくい のかもしれません。 理由③ 感覚的に抱っこや接触が苦手 触られることが苦手。 急に抱きしめられるとびっくりする。 顔を近づけられるのが嫌。 そんな感覚特性がある子もいます。 この場合、 「抱っこを嫌がる=お母さんが嫌い」 ではありません。 触覚刺激が強すぎる可能性もあります。 その子が受け入れやすい距離や触れ方を探すことが必要です。 理由④「困っている」ことに自分で気づきにくい 自分の気持ちを言葉にすることが難しい子では、 「怖い」 「不安」 「寂しい」 「助けてほしい」 という自分の状態自体に気づきにくいことがあります。 すると、人に助けを求めるところまでつながりません。 まず、 「困ったね」 「ちょっと怖かった?」 「一緒にやってほしかった?」 と、大人が気持ちや状態に言葉を添えていくことが役立つことがあります。 大切なのは「もっと甘えさせる」ことではない 甘え下手に見えると、 「もっと抱っこしなきゃ」 「もっとくっつかなきゃ」 と思うかもしれません。 でも、大切なのは量ではありません。 子どもから出ている小さなサインに気づいて、応えること です。 例えば、 こちらをちらっと見る。 近くに座る。 物を持ってくる。 小さな声を出す。 手を伸ばす。 これも、 「一緒にいて」 「見て」 「助けて」 というサインかもしれません。 家庭でできること① 子どものそばにいる 無理に抱っこする必要はありません。 子どもが遊んでいる横に座る。 同じものを見る。 子どもの行動に言葉を添える。 まずは、 「この人と一緒にいても大丈夫」 という経験を増やします。 家庭でできること② 小さな要求にすぐ応える 指差し。 視線。 手を引く。 小さな発声。 こうしたサインが出たら、 「これ?」 「やってほしい?」 と応えます。 子どもにとって、 「伝えたら分かってもらえた」 という経験になります。 家庭でできること③ 甘えるための言葉を教える 「やって」 「来て」 「一緒に」 「手伝って」 「抱っこ」 など、 その子が使える方法で教えます。 言葉でなくても、 サインやカードでも構いません。 人を頼る方法を持つことは、とても大切な生活スキルです。 甘えられることは、依存ではありません 子どもが安心して大人を頼れることは、 ずっと大人に依存させることではありません。 困ったときには人を頼り、 安心したらまた自分の世界を探索する。 こうした行き来が、自立の土台になります。 まとめ 「甘えてこない」 という行動だけを見て、 「お母さんへの愛着がない」 と考える必要はありません。 甘えたいけれど、 伝え方が分からない。 人とのやり取りが難しい。 感覚的に接触が苦手。 自分の気持ちに気づきにくい。 さまざまな理由があります。 大切なのは、 「甘えない子」と決めつけるのではなく、その子なりの「そばにいて」のサインを見つけることです。 発達支援教室クローバーでは、親子の実際のやり取りを見ながら、 「この子はどんな方法で人を求めているのか」 「どこでやり取りが途切れているのか」 「どんな関わりを増やすとよいのか」 を具体的に整理します。 → 発達支援教室クローバー「アセスメント&アドバイス」へ
-
2026.10.16
「時間が読めない」子どもとは?発達障害の子が時間感覚をつかみにくい理由
「あと5分だよ」と言っても伝わらない。 「早くして!」と言っても急がない。 朝の支度にいつも時間がかかる。 ゲームを始めると、いつまでたってもやめられない。 そんな様子を見ると、 「時計は読めるのに、どうして時間が分からないの?」 と思うことがあります。 実は、 時計が読めることと、時間を使えることは別の力です。 発達障害・発達特性のある子の中には、 「5分がどのくらいなのか」 「今始めないと間に合わない」 「この作業には何分必要なのか」 といった時間の扱いが苦手な子がいます。 「7時30分」が読めても、時間を使えるとは限らない 例えば、 時計を見て、 「7時30分」 と答えられる子がいるとします。 でも、 8時に家を出るためには、 着替え10分。 朝食15分。 歯磨き5分。 荷物の準備5分。 など、 「あと何分あるか」 「何を先にするか」 を考える必要があります。 これは単なる時計の読み方ではありません。 計画・見通し・注意・切り替え・作業時間の予測 など、複数の力が必要です。 理由①「5分」が体感として分かりにくい 5分という数字は分かる。 でも、 5分が実際にどのくらいの長さなのか分からない。 そんな子がいます。 楽しいゲームをしている5分と、 何もせず待っている5分では、 私たち大人でも感じ方は違います。 自閉スペクトラム症の時間知覚研究でも、時間処理の一部に違いがみられる研究があります。 ただし、すべての自閉症児に「時間知覚の障害」があるとまでは言えません。 特に複雑な時間管理には、認知機能や実行機能など複数の要因が関わると考えられます。 理由② 今していることから切り替えにくい ゲーム。 動画。 工作。 電車遊び。 好きなことをしていると、 「もう時間だよ」 と言われても止められない。 これは、 「時間が分からない」 だけではなく、 今の活動から次の活動へ切り替える難しさ かもしれません。 その場合、 何度も時計を見せるだけでは解決しにくいことがあります。 理由③ 先のことを想像するのが難しい 「今着替えないと遅刻するよ」 と言われても、 遅刻する未来が実感できない。 「明日の準備をして」 と言われても、 明日の自分を想像しにくい。 こうした「未来を見通す力」も時間管理に関係します。 目の前にあることの方が強く感じられる子では、 未来の予定より、 今していることを優先しやすくなります。 理由④ 作業にかかる時間を見積もるのが難しい 「宿題なんて5分で終わる」 と思って始めたら30分かかった。 逆に、 「絶対終わらない」 と思っていたら10分で終わった。 こうしたこともあります。 時間管理には、 「これは何分くらいかかる?」と予測する力 が必要です。 予測がずれると、 予定全体も崩れやすくなります。 理由⑤ 注意がそれやすい 着替えようとした。 途中でおもちゃが目に入った。 遊び始めた。 歯磨きに行く途中で本を見つけた。 読んでしまった。 この場合、 時間感覚だけでなく、 注意を目的に向け続ける力 も関係しています。 特にADHDでは、注意制御、ワーキングメモリ、抑制など実行機能の難しさが時間管理に影響することがあります。 「早く!」を繰り返しても分かりにくい 大人はつい、 「早くして!」 「時間ないよ!」 「急いで!」 と言ってしまいます。 でも、 「早く」は具体的な時間ではありません。 何を。 いつまでに。 どのくらいの速さで。 が分かりません。 そこで、時間を目で見える形にします。 家庭でできること① 時間を見えるようにする 例えば、 ・タイマー・砂時計・残り時間が視覚的に減る時計・予定表・写真や絵のスケジュール などを使います。 「あと10分」 という言葉だけではなく、 時間の減り方を目で確認できる ようにします。 家庭でできること② 予告を入れる 突然、 「終わり!」 と言われると切り替えにくい子には、 「あと10分」 「あと5分」 「これが終わったら終わり」 と予告します。 重要なのは、 同じ方法を繰り返すことです。 家庭でできること③ 実際に時間を測ってみる 「着替えるのに何分かかると思う?」 と予想して、 実際に測ってみます。 予想10分。 実際5分。 という経験を繰り返します。 すると、 「自分が何をするのに何分必要か」 という感覚が少しずつ育っていきます。 家庭でできること④「○時まで」より行動をセットにする 「7時45分までに準備して」 だけでは難しい子には、 7:20 着替える7:30 朝ごはん終了7:35 歯磨き7:40 ランドセル など、 時間と行動をセットにします。 大切なのは「時間が分からない」の中身を見ること 「時間感覚がない」 という一言で終わらせると、支援方法が分かりません。 時間そのものが分かりにくいのか。 切り替えが難しいのか。 注意がそれるのか。 作業時間を予測できないのか。 未来を想像しにくいのか。 理由によって支援方法は違います。 まとめ 発達障害・発達特性のある子が時間を守れないとき、 「だらしない」 「やる気がない」 だけで説明しないことが大切です。 時計を読む力とは別に、 時間を感じる。 先を見通す。 行動を切り替える。 順番を決める。 注意を保つ。 といった力が必要です。 「時間を守れない」ではなく、「時間のどこで困っている?」と考えてみてください。 発達支援教室クローバーでは、日常生活の具体的な行動から、 「何ができていて、どこで止まっているのか」 を整理して支援方法を考えます。 → 発達支援教室クローバー「アセスメント&アドバイス」へ
-
2026.10.14
子どもが人の気持ちを理解できないとき|家庭でできる5つのトレーニング
「相手が嫌がっているのに、やめられない」 「お友達が怒っている理由が分からない」 「何度説明しても、人の気持ちが分からないように見える」 そんな様子があると、 「この子は人の気持ちが分からないのかな?」 「思いやりがないのでは?」 と心配になることがあります。 でも、まず知っておいてほしいことがあります。 「人の気持ちを理解する力」は、一つの能力ではありません。 相手を見る。 表情を見る。 何が起きたか理解する。 自分と相手では考えが違うと気づく。 言葉の意味を考える。 相手の立場を想像する。 こうしたいくつもの力が組み合わさって、私たちは相手の気持ちを考えています。 だから、 「もっと人の気持ちを考えなさい」 と言うだけでは、できるようにならないことがあります。 今回は、家庭でできる5つのトレーニングを紹介します。 トレーニング① 気持ちを表す言葉を増やす 最初に増やしたいのが、 気持ちを表す言葉 です。 「うれしい」 「悲しい」 「怒っている」 だけではありません。 例えば、 「悔しい」 「恥ずかしい」 「困った」 「びっくりした」 「心配」 「がっかりした」 「嫌だった」 「迷っている」 などがあります。 日常生活の中で、 「負けて悔しかったね」 「急に予定が変わって困ったね」 「できるか心配だったんだね」 と、大人が言葉を添えていきます。 ただし、 「あなたは絶対こう思った」 と決めつけないことも大切です。 「悔しかった?」 「それとも違った?」 と確認します。 自分の気持ちを理解することは、他者の気持ちを考える土台の一つになります。 トレーニング② 表情だけでなく「何が起きたか」を考える よくある練習に、 「この顔はどんな気持ち?」 という表情カードがあります。 もちろん、それも一つの方法です。 ただ、実際の生活では、表情だけで人の気持ちを判断しているわけではありません。 例えば、 A君が一生懸命作った積み木を、B君が間違えて壊してしまいました。 A君は黙って下を向きました。 このとき、 「どんな顔?」 だけではなく、 「その前に何があった?」 「A君は何をしていた?」 「一生懸命作ったものが壊れたら、どんな気持ちになるかな?」 と、 出来事と気持ちを結びつけて考えます。 トレーニング③「自分と相手は違う」を経験する 人の気持ちを理解するときに大切なのが、 自分が知っていることと、相手が知っていることは違う ということです。 家庭でも簡単なクイズができます。 例えば、 お父さんがお菓子を冷蔵庫から棚に移しました。 お母さんは、その場を見ていません。 そこで、 「お母さんは、お菓子がどこにあると思っているかな?」 と聞きます。 子どもは棚に移したことを知っています。 でもお母さんは知りません。 「あなたは見たから知っているね」 「でもお母さんは見ていないね」 「だから、知っていることが違うんだね」 と整理します。 また、 「私はイチゴが好き」 「あなたはブドウが好き」 というように、 人によって好みや考え方が違う 経験をたくさん言葉にしていくこともできます。 トレーニング④ 分からないときは「聞けばいい」と教える ここは、とても大切です。 私たち大人でも、 人の気持ちを100%正確に読むことはできません。 だから、 「ちゃんと相手の気持ちを読みなさい」 だけを目標にする必要はありません。 むしろ覚えてほしいのは、 分からないときは、確認していい ということです。 例えば、 「嫌だった?」 「まだ使っている?」 「一緒にやっていい?」 「どうしてほしい?」 「これでいい?」 こうした言葉を具体的に教えます。 これは、 相手の心を当てる練習ではありません。 分からないときに、人と確認しながら関係を作る力 を育てています。 トレーニング⑤ トラブルを「反省会」ではなく「作戦会議」にする 友達とのトラブルが起きたとき、 「どうしてそんなことしたの?」 「相手の気持ちを考えて!」 と問い詰めても、本人には分からないことがあります。 そんなときは、出来事を順番に整理します。 ①何があった? ②あなたは何をしたかった? ③相手は何をしたかった? ④相手は何と言った? ⑤次に同じことがあったらどうする? 例えば、 「一緒に遊びたかった」 ↓ 「何も言わず、おもちゃを取った」 ↓ 「友達が怒った」 という出来事なら、 次回は、 「一緒にやっていい?」 と言ってみる。 それだけでも十分です。 目的は、 悪かったことを何度も確認することではありません。 次に使える方法を一つ増やすことです。 「人の気持ちが分からない」の中身は、一人ひとり違う 同じように、 「相手の気持ちが分からない」 ように見える子でも、理由は違います。 例えば、 ・表情に気づきにくい・状況を理解するのが難しい・自分がやりたいことに集中している・言葉を文字通り受け取りやすい・自分と相手の考えが違うことに気づきにくい・分かっていても行動を止められない・どう確認したらいいか分からない などです。 ここを全部、 「人の気持ちが分からない」 でまとめてしまうと、何を教えればよいか分からなくなります。 家では分かるのに、学校ではできないこともある 家で聞けば、 「この子、怒ってる」 と答えられる。 絵カードでも正解できる。 でも実際の友達関係ではできない。 そんなこともあります。 実際の遊びでは、 相手の話を聞く。 表情を見る。 周囲を見る。 自分の気持ちを調整する。 答えを考える。 行動する。 といったことを同時に行わなくてはいけません。 だから、 机の上で分かることと、実生活で使えることは別 なのです。 家庭で練習したことを、実際の生活の中でも少しずつ使えるようにしていきます。 「思いやりがない」と決めつけない 相手が泣いているのに笑っている。 嫌がっているのに近づいていく。 そんな様子を見ると、 「どうして人の気持ちが分からないの?」 と思うことがあります。 でも、 本当に気持ちが理解できないのか。 相手の表情に気づいていないのか。 どう対応すればいいか分からないのか。 自分の行動を止められないのか。 によって支援は違います。 行動だけを見て、その子の気持ちまで決めつけないこと。 これは大人にも大切なことです。 まとめ|「人の気持ちを考えて」を具体的にする 子どもが人の気持ちを理解できないように見えるとき、 「もっと相手の気持ちを考えなさい」 だけでは、何をしたらよいのか本人には分からないことがあります。 家庭では、 1.気持ちを表す言葉を増やす 2.表情だけでなく状況から考える 3.自分と相手は違うと知る 4.分からなければ確認する 5.トラブルを次の作戦に変える この5つから始めてみてください。 そして一番大切なのは、 「できない」のではなく、「どこで分からなくなっているのか」を見ることです。 そこが分かれば、その子に必要な支援が見えてきます。 あわせて読みたい ・発達障害の子が同年代を苦手にするのはなぜ?大人や年下とは遊べる子の特徴 「何度教えてもうまくいかない」ときは 発達支援教室クローバーでは、 「人の気持ちを理解できない」 という言葉だけで判断せず、 実際のお子さんの様子から、 「表情を見るところで困っている?」 「状況の理解?」 「言葉?」 「切り替え?」 「自分の気持ちの調整?」 と、一つずつ整理していきます。 そして、 今のお子さんに何を教えるとよいのか。 家庭で何を練習するとよいのか。 を具体的に考えます。 家庭でいろいろ試しているけれどうまくいかない。 友達とのトラブルを繰り返している。 学校での人間関係が心配。 そんな場合には、一度、お子さんの行動を整理してみませんか。 → 発達支援教室クローバー「アセスメント&アドバイス」へ
-
2026.10.12
発達障害の子が年下とばかり遊ぶ理由|同年代との関係で見たいポイント
「同じ年の子とは遊ばないのに、年下の子とはよく遊ぶ」 「学校では友達が少ないのに、小さい子の面倒はよく見る」 「いつも年下の子ばかり選んでいるけれど、大丈夫?」 こんな相談を受けることがあります。 まず知っておいてほしいのは、 年下の子と遊ぶこと自体は、問題ではありません。 小さい子が好き。 面倒を見るのが好き。 年齢の違う友達がいる。 それは、その子の大切な人間関係です。 ただし、 「年下とは遊べるのに、同年代との関係になると極端に難しくなる」 場合には、 その違いを見ることで、その子がどこで困っているのかが分かることがあります。 年下の子との関係は、自分が主導しやすい 例えば、5歳の子と3歳の子が遊ぶとします。 5歳の子が、 「これやろう」 「次はこうするよ」 と言えば、3歳の子がついてきてくれることがあります。 自分がルールを決める。 遊び方を教える。 相手を手伝う。 こうした立場になりやすいため、 自分のペースで関係を作りやすくなります。 同年代では、そうはいきません。 相手も、 「私はこれがしたい」 「それは嫌」 「私が先」 と主張します。 そこで初めて、 相談する。 譲る。 交代する。 妥協する。 という力が必要になります。 理由① 年下の方が予測しやすい 発達特性のある子の中には、 相手の反応が予測できないことを負担に感じる子がいます。 同年代の友達は、 自分とは違う遊びを提案します。 ルールを変えます。 冗談を言います。 急に別の友達のところへ行くこともあります。 一方、年下の子との関係では、 自分が遊びを決められる場面が多く、 次に何が起こるか予測しやすい ことがあります。 そのため安心して遊べるのです。 理由② 得意な立場になれる 同年代では、 足が速い。 ゲームが強い。 話が上手。 流行を知っている。 など、さまざまな比較が起きます。 同年代との関係でうまくいかない経験が続いている子にとって、 年下の子との関係は、 「教えてあげられる」 「できるところを見せられる」 「頼ってもらえる」 という経験になりやすいことがあります。 つまり、 年下との関係では自信を持ちやすい のかもしれません。 これは必ずしも悪いことではありません。 むしろ、その子が人との関係の中で成功体験を持てているとも考えられます。 理由③ 同年代では「対等なやり取り」が必要になる 同年代の関係で難しくなるのが、 対等な関係 です。 自分だけが決めることはできません。 相手にも希望があります。 例えば、 自分「鬼ごっこしよう」 友達「サッカーがいい」 となったとき、 どちらかが譲る。 順番にする。 別の遊びにする。 という交渉が必要です。 こうした交渉が苦手な子では、 自分についてきてくれる年下の子との関係の方が楽になります。 理由④ 会話のレベルが合いやすいこともある これは一人ひとり違いますが、 言葉の発達や興味の内容が、実年齢の同年代とは少し違っている場合があります。 すると、 同年代の会話についていきにくい。 冗談が分からない。 流行の話が分からない。 話題が合わない。 ということが起こります。 年下の子との会話の方が分かりやすく、 安心して話せる場合もあります。 理由⑤ 同年代との失敗経験を避けている ここは見落としたくないポイントです。 以前、 「入れてもらえなかった」 「からかわれた」 「怒られた」 「遊びについていけなかった」 という経験が繰り返されると、 本人が、 「同じ年の子は苦手」 と思うようになることがあります。 年下の子なら、自分を受け入れてくれる。 年下なら失敗しにくい。 そう感じて、年下の子を選んでいる可能性もあります。 この場合、 単に、 「同級生と遊びなさい」 と促しても解決しません。 まず、 同年代との関係で何が起きていたのか を見ていく必要があります。 年下と遊ぶことを禁止する必要はありません ここは非常に重要です。 「年下とばかり遊んでいるから、同年代と遊ばせなければ」 と考える必要はありません。 本人にとって安心できる関係を奪ってしまう可能性があります。 年下の子との関係には、 教える。 待ってあげる。 助ける。 相手を見る。 といった大切な社会的経験もあります。 見るべきなのは、 年下と遊ぶことではなく、同年代との関係で本人が困っているかどうか です。 では、何を見ればいい? 私は、次のように見ていきます。 ①本人は同年代と遊びたいのか 本人が、 「友達と遊びたい」 「みんなに入りたい」 と思っているのに、できないのであれば支援が必要です。 一方で、 本人が一人や年下の子との関係を楽しんでいて困っていない場合もあります。 ②同年代になると何が変わるのか 年下とは遊べる。 では、同年代になると何が起きるのでしょう。 ・自分の思い通りにならない・話についていけない・遊びのルールが分からない・負けることが増える・断られる・相手の意見を受け入れられない など、違いを探します。 ③年下とは「一緒に遊んでいる」のか ここも確認したいところです。 年下の子と、 お互いにやり取りして遊んでいるのか。 それとも、 自分の指示に従わせているだけなのか。 同じ「年下と遊ぶ」でも中身は違います。 家庭でできる支援① 年下との遊びを観察する 年下の子と遊んでいるときに、 何がうまくいっているのかを見てください。 例えば、 「自分がルールを決められると安心している」 「1対1なら会話できている」 「相手がゆっくり話すと分かる」 などです。 うまくいっている理由が分かれば、 同年代との関係にも応用できます。 家庭でできる支援② いきなり大集団に入れない 同年代との関係を経験させたい場合にも、 いきなり大人数に入れる必要はありません。 まずは、 気の合いそうな同年代の子と1対1。 短時間。 好きな遊び。 ルールが分かりやすい活動。 などから始めます。 難易度を下げることは、 甘やかしではありません。 できる環境から練習する ということです。 家庭でできる支援③「譲りなさい」ではなく方法を教える 同年代との関係では、 意見がぶつかることがあります。 そんなとき、 「仲良くしなさい」 「譲りなさい」 ではなく、 「1回ずつにしよう」 「じゃんけんで決めよう」 「あなたの案の次に、お友達の案をやろう」 と、 具体的な解決方法を教えます。 大切なのは「年齢」ではなく「関係の中身」 年下と遊ぶ。 年上と遊ぶ。 大人と話す。 一人で過ごす。 どれも、それだけで良い・悪いと判断するものではありません。 大切なのは、 その子が人との関係の中で、 自分の気持ちを伝えられているか。 相手の気持ちも受け取れているか。 困ったときに対処できているか。 そして何より、 本人がその関係で困っているか を見ることです。 まとめ 発達障害・発達特性のある子が年下とばかり遊ぶとき、 すぐに、 「幼いから」 「同年代と付き合えないから」 と決めつける必要はありません。 年下との関係には、 安心できる。 予測しやすい。 自信を持てる。 自分が主導できる。 といった理由があるかもしれません。 大切なのは、 「なぜ年下と遊ぶのか」より、「同年代になると何が難しくなるのか」を見ることです。 そこに、その子に必要な支援のヒントがあります。 あわせて読みたい ・発達障害の子が同年代を苦手にするのはなぜ?大人や年下とは遊べる子の特徴 ・子どもが人の気持ちを理解できないとき|家庭でできる5つのトレーニング 同年代との関係が心配なときは 発達支援教室クローバーでは、 「年下としか遊ばない」 という表面的な行動だけを見るのではなく、 その子にとって、なぜその関係が楽なのか を一緒に考えます。 そして、 同年代との関係で何が難しいのか。 今、どんな力を育てるとよいのか。 家庭で何ができるのか。 を整理します。 「同年代の友達ができない」 「年下の子としか遊ばない」 「学校で一人になることが増えてきた」 と心配な場合には、一度お子さんの様子を整理してみませんか。 → 発達支援教室クローバー「アセスメント&アドバイス」へ
-
2026.10.10
話しかけているのに会話が増えない?発達障害の子への「応じる」コミュニケーション
たくさん質問したり「言ってみて」と促したりしても、子どもとの会話が増えないことがあります。最新研究から、子どもの目線・表情・動きを発信として捉え、見る・待つ・短く返す関わり方を解説します。 「たくさん話しかけているのに、なかなか会話が増えません」 「これは何?何色?と言ってみて、と毎日声をかけています」 発達が気になるお子さんの保護者から、こうした相談を受けることがあります。 子どもの言葉を増やしたいと思えば、話しかける量や質問を増やしたくなるのは自然です。 しかし、コミュニケーションを育てるときに大切なのは、大人が話す量だけではありません。 子どもが出した小さな発信に、大人がどう応じるかが重要です。 18の支援プログラムに共通していたこと 2026年に発表された研究では、自閉スペクトラム症の幼児を対象とする18種類の保護者媒介型コミュニケーション支援が比較されました。 そこから70の支援技法が抽出されましたが、多くのプログラムに共通していたのは、 子どもの興味に沿う 子どもの発信に敏感に応じる 子どもの音や動きをまねる 一緒に楽しめる活動をつくる 質問や指示を増やしすぎない 子どもの行動を短い言葉で表す という関わりでした。 質問は会話とは限りません 例えば、子どもが車のおもちゃで遊んでいるとします。 大人が、 「これは何?」「何色?」「車って言って」「タイヤはどこ?」 と続けると、子どもは答えを求められる側になります。 これは知識を確認する練習にはなりますが、必ずしも双方向のコミュニケーションにはなりません。 子どもにとっては、遊んでいた時間が「正しく答える時間」に変わることもあります。 質問してはいけないわけではありません。 問題は、親子の時間のほとんどが質問と指示になっていないか、ということです。 まず、言葉以外の発信を見る 子どもの発信は言葉だけではありません。 おもちゃを見る 大人の顔を見る 指をさす おもちゃを持ってくる 笑う 声を出す 大人の手を引く 同じ動きを繰り返す こうした行動にも、興味、要求、驚き、共有したい気持ちが含まれていることがあります。 例えば、子どもが走る車を見て笑ったら、 「速いね」「走ったね」「もう一回?」 と、短く返します。 子どもが「く」と言ったら、 「くるま」「赤いくるま」 と少しだけ言葉を足します。 正しく言い直させる必要はありません。 「見る・待つ・短く返す」 家庭で意識するのは、次の3段階です。 1.見る 子どもが何を見ているか、何をしているか、どんな表情かを見ます。 2.待つ すぐに質問や指示を出さず、子どもが目線、声、動きで何かを発信するまで少し待ちます。 3.短く返す 子どもの発信に合った言葉を、一言か二言で返します。 子どもが理解できる長さにすることが重要です。 発語だけを成果にしない 3歳未満の自閉症児を対象とした31件のRCTをまとめた研究では、保護者を介した支援により、 親子相互作用 保護者の応答性 社会的コミュニケーション 適応能力 には小さな改善が確認されました。 一方、言語能力そのものには統計的に明確な効果が確認されませんでした。 ですから、「この方法をすれば必ず話せるようになる」とは言えません。 しかし、 子どもから大人を見る 一緒に楽しむ 伝えようとする 大人の応答を待つ やりとりが一往復から二往復になる といった変化は、コミュニケーションの重要な土台です。 その子に合った「応じ方」があります 同じように言葉が少ない子でも、 人への関心が弱い 言葉の理解が難しい まねることが苦手 感覚刺激に気を取られやすい 要求は伝えられるが、共有が少ない 発音や運動面に難しさがある など、背景は異なります。 必要な支援も同じではありません。 発達支援教室クローバーでは、発語の数だけでなく、目線、共同注意、模倣、理解、要求、遊び、感覚特性を整理し、その子に合う関わり方を考えます。 「話しかけても反応が少ない」「何をどう教えればよいかわからない」 という方は、アセスメント&アドバイスまたは保護者伴走をご利用ください。 発達支援教室クローバーhttps://hattatsu-clover.com/ ※急激な発語の消失、聴こえの問題、発達の退行、けいれん等が疑われる場合は、家庭での関わり方だけで判断せず、小児科・発達専門医等への確認が必要です。
-
2026.10.08
子どもの問題行動、どう対応する?「なぜこの行動をするのか」を考える新しい保護者支援
「叩いたときは、どう対応したらいいですか?」 「かんしゃくが起きたら、無視した方がいいですか?」 「何度言っても同じことをするのですが、どう注意すればいいでしょうか?」 発達相談をしていると、保護者の方からよく聞く質問です。 もちろん、具体的な対応方法を知ることは大切です。 でも最近の研究では、もう一つ大切な視点が注目されています。 それは、 「この行動の裏に、この子のどんな気持ちや意図、困りごとがあるのだろう?」 と考える力です。 「叩いたらこうする」 「泣いたらこう対応する」 と対応方法を覚えるだけでなく、 なぜ、その行動が起きたのかを考えられるようになること。 今回は、そんな保護者支援についての新しい研究をご紹介します。 自閉症児の保護者249人を対象にした研究 2026年、自閉症のある子どもの保護者を対象にしたランダム化比較試験(RCT)が報告されました。 参加したのは、自閉症児の保護者249人です。 保護者は、 ・介入を受けるグループ・待機するグループ に無作為に分けられました。 介入はZoomで行われ、 週1回・90分を4週間 という比較的短いプログラムでした。 内容には、 ・感情について理解する・感情を調整する・子どもの行動の背景にある気持ちや意図を考える といった要素が含まれていました。 講義を聞くだけではなく、家庭で起きた出来事を振り返ったり、ロールプレイをしたりする構成です。 Parental Reflective Functioningとは? この研究で中心となったのが、 Parental Reflective Functioning(PRF) です。 少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、 子どもの行動を、その奥にある気持ち・考え・意図・状態と結びつけて考える力 です。 例えば、子どもが突然おもちゃを投げたとします。 そのとき、 「また投げた!」 「何度言ったら分かるの!」 と、行動だけを見ることもできます。 一方で、 「何があったんだろう?」 「終わりにしたくなかった?」 「うまく言葉で伝えられなかった?」 「疲れていた?」 「助けてほしかった?」 と考えてみる。 もちろん、本当の理由は本人にしか分からないこともあります。 だから大切なのは、 子どもの気持ちを当てることではありません。 「こうかもしれない」 「でも違うかもしれない」 と、決めつけずに考えることです。 研究では、保護者にどんな変化があった? この研究では、介入を受けた保護者は待機群と比べて、 ・子どもの内面を考える力・育児に対する自己効力感・感情についての考え方 などに改善がみられました。 また、保護者から見た子どものコミュニケーションや一部の適応行動にも改善が報告されています。 特に、年齢の低い子どもの保護者で効果が目立っていました。 「正しい対応を教える」だけではない保護者支援 これまでの保護者支援では、 「○○したときには、こう対応しましょう」 という形が多く使われてきました。 それ自体は大切です。 ただ、子どもの行動は、毎回同じ理由で起こるとは限りません。 例えば「叩く」という同じ行動でも、 ・欲しいものを取られた・言いたいことが伝わらなかった・予定が変わった・相手に近づきたかった・もう限界だった・やめてほしかった など、背景は違います。 背景が違えば、必要な支援も変わります。 だから、 対応方法を覚えるだけでなく、その子の行動の背景を読み解く力も育てる。 これが、これからの保護者支援でとても大切だと考えます。 例えば「叩く」をどう見るか 子どもが友達を叩いたとします。 もちろん、叩く行動自体は止めます。 安全を守ることが最優先です。 その上で、 「なぜ叩いたのか」 を考えます。 ①「返して」が言えなかった おもちゃを取られた。 でも、 「返して」 と言えない。 その代わりに手が出た。 この場合に必要なのは、 「叩かない!」 と繰り返すことだけではありません。 「返して」と伝える方法を教えること かもしれません。 ②遊びをやめたくなかった 「もう終わり」 と言われた瞬間に叩いた。 この場合は、 切り替えの難しさが背景にあるかもしれません。 必要なのは、 見通しを作ったり、 「あと1回」 という終わり方を教えたりすることかもしれません。 ③しんどさが限界だった 騒がしい場所。 人が多い。 長時間がんばった。 そこで最後に手が出た。 この場合、 叩く直前だけを見ても原因は分かりません。 その前から負荷が積み重なっていなかったか を見る必要があります。 「子どもの気持ちを当てる」ことが目的ではありません ここは、とても大切です。 子どもの行動を見て、 「あなたはこう思ったんでしょ」 と決めつけることがPRFではありません。 むしろ、 「もしかして○○だった?」 「それとも違う?」 と考えることです。 親だからといって、子どもの気持ちを全部分かる必要はありません。 大切なのは、 分からないことを、分からないまま考え続けること。 「この子のことは全部分かっている」 と決めつけるより、 「何が起きているのだろう?」 と考えられる方が、子どもを丁寧に見ることにつながります。 保護者が「自分で考えられる」ようになる支援 保護者支援で大切なのは、 毎回、 「先生、今回はどうしたらいいですか?」 と答えをもらうことだけではないと思っています。 最終的には保護者自身が、 「今回は、言葉で伝えられなかったのかな」 「いつもより疲れていたかもしれない」 「今日は見通しがなかったから荒れたのかな」 と、子どもの行動を整理できるようになる。 そして、 「では次は、これを試してみよう」 と考えられる。 そこまでいくと、家庭で新しい問題が起きたときにも対応しやすくなります。 クローバーでも「行動の背景」を大切にしています 発達支援教室クローバーでも、 「問題行動をなくす」 だけを目的にはしていません。 例えば、かんしゃくがあるときには、 「かんしゃくを止めるにはどうするか」 だけではなく、 ・伝えたいことが伝えられているか・見通しが持てているか・待つことが難しいのか・切り替えが難しいのか・助けを求める方法を知っているか などを見ていきます。 そして、 その子に必要な、 「伝える」 「待つ」 「切り替える」 「助けを求める」 といった力を少しずつ増やしていきます。 保護者の方にも、 「今回の行動は、何が背景にありそうか」 を一緒に考えていただきます。 まとめ|行動を見るだけでなく、その奥を見る 子どもが、 叩く。 投げる。 泣く。 怒る。 逃げる。 拒否する。 同じことを繰り返す。 そんなとき、 行動だけを見て、 「どうやってやめさせよう」 と考えたくなります。 でも、その前に一度、 「この子に、何が起きているのだろう?」 と考えてみてください。 そこに、 伝えられない気持ち。 見通しのなさ。 困りごと。 不安。 疲れ。 助けを求めるサイン。 が隠れているかもしれません。 対応方法を覚えるだけでなく、その子の行動の背景を読み解く力も育てる。 これからの保護者支援で、私はこの視点を大切にしていきたいと考えています。 お子さんの行動の「なぜ?」を一緒に整理します 「何度言っても同じことをする」 「かんしゃくの理由が分からない」 「叩く・投げるがなかなか減らない」 「いろいろな対応を試したけれど、うまくいかない」 そんなとき、 対応方法を増やす前に、 その行動がなぜ起きているのか を整理すると、見えてくるものがあります。 発達支援教室クローバーでは、お子さんの様子とご家庭での状況を一緒に整理し、 「何が背景にあるのか」 「今、何を身につけると生活が楽になるのか」 「家庭では何を試すのか」 まで具体的に考えます。 → 発達支援教室クローバー「アセスメント&アドバイス」へ 参考文献 Enav Y, Kirsman N, Erhard Weiss D, Mayer Y.Seeing the Child Within: A Randomized Controlled Trial of Reflective Functioning Intervention for Parents of Autistic Children.Autism Research. 2026;19(8).DOI: 10.1002/aur.70301
-
2026.10.06
発達障害の子が同年代を苦手にするのはなぜ?大人や年下とは遊べる子の特徴
「大人とはよく話せるのに、同年代の子とは遊べない」 「年下の子とは楽しそうなのに、クラスでは一人でいることが多い」 「先生とはたくさん話せるのに、友達になるとうまくいかない」 こんな様子があると、 「コミュニケーションが苦手なのかな?」 「友達が嫌いなのかな?」 「このまま友達ができなかったらどうしよう」 と心配になることがあります。 でも、 大人や年下とは関われるのに、同年代との関係だけ難しい という子は珍しくありません。 なぜでしょうか。 実は、同年代との関係には、大人と話すときよりもずっと多くの力が同時に必要になります。 今回は、発達障害・発達特性のある子が同年代を苦手にする理由を、具体的に見ていきます。 大人との会話では、大人が合わせてくれている 大人と子どもが話すとき、多くの場合、大人の方が子どもに合わせています。 例えば、 ・返事が出るまで待つ・分からなければ言い換える・子どもの好きな話題に合わせる・話が飛んでも意味をくみ取る・困っていたら助け舟を出す といったことを自然にしています。 そのため、大人との会話では困らない子でも、 同年代の友達同士になると急に難しくなることがあります。 子ども同士では、相手も自分の話をしたいからです。 同年代との遊びは、とても忙しい 例えば、3人で鬼ごっこをしているとします。 そこに参加するだけでも、 「今、何をしているのかな?」 「入ってもいいかな?」 「誰に聞けばいいかな?」 「今声をかけてもいいかな?」 「ルールは何かな?」 と考えなくてはいけません。 入った後も、 「今度は自分が鬼」 「そこはなしだよ」 「やっぱり別の遊びにしよう」 と、遊びはどんどん変化します。 つまり同年代との遊びでは、 相手を見る・聞く・考える・待つ・譲る・切り替える といった複数の力を短時間で使っています。 理由① 遊びの「暗黙のルール」が分かりにくい 遊びには、説明されないルールがあります。 例えば、 「今日はこの辺までが鬼ごっこの範囲」 「この子は小さいから少し手加減する」 「さっきまでのルールはもう終わり」 などです。 発達特性のある子の中には、 決められたルールは理解できても、 その場で変わるルールや暗黙の了解 を読み取ることが苦手な子がいます。 本人はルールを守っているつもりなのに、 周囲からは、 「自分勝手」 「空気が読めない」 と思われてしまうこともあります。 理由② 遊びに入るタイミングが分からない 本当は一緒に遊びたい。 でも、どう入ればいいのか分からない。 そんな子もいます。 友達の近くをウロウロする。 急に遊びに入る。 いきなりおもちゃを取る。 突然、自分の話を始める。 こうした行動も、 「一緒に遊びたい」という気持ちの表れ かもしれません。 この場合、 「勝手に入らない!」 と注意するだけでは不十分です。 「一緒にやっていい?」 「次、入ってもいい?」 など、実際に使える言葉を教える必要があります。 理由③ 自分と相手の「やりたいこと」を調整するのが難しい 友達との遊びでは、 いつも自分のやりたいことができるわけではありません。 自分は電車で遊びたい。 相手は鬼ごっこがしたい。 自分は青がいい。 相手も青がいい。 こうしたとき、 譲る。 交代する。 相談する。 別の方法を考える。 といった調整が必要になります。 「自分の思いを伝える力」だけでなく、 相手の考えを取り入れる力 も必要なのです。 理由④ 会話のスピードについていけない 大人は子どもの返事を待ってくれます。 しかし子ども同士では、 「これやろう!」 「やっぱりこっち!」 「次これ!」 と、話がどんどん進みます。 考えているうちに話題が変わる。 答えようと思ったときには、みんなが移動している。 そんなこともあります。 言葉の理解や返答に少し時間が必要な子にとって、 同年代の集団はかなり忙しい環境です。 理由⑤ 相手の気持ちを見る余裕がなくなる 友達との関係では、 「自分が何をしたいか」 だけでなく、 「相手がどう思っているか」 も見なくてはいけません。 相手は楽しそう? 嫌そう? もうやめたい? まだ遊びたい? 自分のやりたいことに集中すると、相手を見る余裕がなくなる子もいます。 これは単純に、 「思いやりがない」 という話ではありません。 相手を見ること、状況を見ること、自分の気持ちを調整することを同時に行うのが難しいのかもしれません。 なぜ年下とは遊べるの? 年下の子との関係では、自分が主導しやすくなります。 「これやろう」 「ここに置いて」 「次はこれね」 と、自分が遊びを決めやすい。 年下の子がついてきてくれることもあります。 つまり、 相手に合わせる量が少なくて済む 場合があります。 だから、 「年下とは遊べる=社会性に問題がない」 とも、 「年下と遊ぶ=問題」 とも、一概には言えません。 見るべきなのは、 同年代との関係のどこで困っているのか です。 「同年代と遊ばない=問題」ではありません ここは大切です。 すべての子どもが、大勢の友達を必要としているわけではありません。 一人で過ごすことが好きな子。 少人数の方が落ち着く子。 年齢の違う人と話す方が好きな子。 いろいろなタイプがあります。 見るべきなのは、 本人が困っているかどうか です。 本当は友達と遊びたいのに入れない。 何度もトラブルになる。 学校に行きたくなくなっている。 仲間外れになっている。 こうした場合には、支援を考える必要があります。 家庭でできること 「友達と仲良くしなさい」 では、何をすればいいのか分からないことがあります。 もっと具体的にします。 例えば、 「一緒にやっていい?って聞いてみよう」 「今使っているから、終わったら貸してって言おう」 「あなたのやり方を1回、次はお友達のやり方を1回やろう」 というように、 実際に使える言葉や行動に変える ことがポイントです。 また、いきなり大人数に入れるのではなく、 気の合う子と1対1。 短い時間。 ルールの分かりやすい遊び。 から始める方法もあります。 「友達が苦手」ではなく、どこで止まっているかを見る 同年代と遊べない子を見たとき、 「コミュニケーションが苦手」 だけで終わってしまうと、何を教えればよいか分かりません。 例えば、 ・遊びに入る方法が分からない・ルールの変化についていけない・自分の話ばかりしてしまう・待てない・負けると崩れてしまう・相手の嫌がっているサインに気づきにくい・自分の希望を変えるのが難しい どこで困っているかによって、支援方法は違います。 「できない」を細かく分けると、「何を教えるか」が見えてきます。 まとめ 大人や年下とは遊べるのに、同年代との関係だけ難しい。 そんなとき、 「協調性がない」 「友達付き合いができない」 と考える必要はありません。 同年代との関係には、 見る。 聞く。 待つ。 伝える。 譲る。 切り替える。 相手の立場を考える。 といったたくさんの力が必要です。 大切なのは、 友達を作らせることではなく、その子がどこで困っているのかを見つけること。 そこが分かれば、教えることも具体的になります。 あわせて読みたい ・発達障害の子が年下とばかり遊ぶ理由|同年代との関係で見たいポイント ・子どもが人の気持ちを理解できないとき|家庭でできる5つのトレーニング お子さんの「どこで困っている?」を一緒に整理します 発達支援教室クローバーでは、 「友達が苦手」 「コミュニケーションが苦手」 という大きなくくりではなく、 その子がどの場面で、何につまずいているのか を具体的に整理します。 そして、 「今、何を教えるとよいのか」 「家庭で何を試すのか」 まで一緒に考えます。 同年代とのトラブルが続いている。 本当は遊びたいのに入れない。 家庭でどう教えたらよいか分からない。 そんな場合は、一度お子さんの様子を整理してみませんか。 → 発達支援教室クローバー「アセスメント&アドバイス」へ
-
2026.10.04
子どもの問題行動、どう対応する?「なぜこの行動をするのか」を考える新しい保護者支援
「叩いたときは、どう対応したらいいですか?」 「かんしゃくが起きたら、無視した方がいいですか?」 「何度言っても同じことをするのですが、どう注意すればいいでしょうか?」 発達相談をしていると、保護者の方からよく聞く質問です。 もちろん、具体的な対応方法を知ることは大切です。 でも最近の研究では、もう一つ大切な視点が注目されています。 それは、 「この行動の裏に、この子のどんな気持ちや意図、困りごとがあるのだろう?」 と考える力です。 「叩いたらこうする」 「泣いたらこう対応する」 と対応方法を覚えるだけでなく、 なぜ、その行動が起きたのかを考えられるようになること。 今回は、そんな保護者支援についての新しい研究をご紹介します。 自閉症児の保護者249人を対象にした研究 2026年、自閉症のある子どもの保護者を対象にしたランダム化比較試験(RCT)が報告されました。 参加したのは、自閉症児の保護者249人です。 保護者は、 ・介入を受けるグループ・待機するグループ に無作為に分けられました。 介入はZoomで行われ、 週1回・90分を4週間 という比較的短いプログラムでした。 内容には、 ・感情について理解する・感情を調整する・子どもの行動の背景にある気持ちや意図を考える といった要素が含まれていました。 講義を聞くだけではなく、家庭で起きた出来事を振り返ったり、ロールプレイをしたりする構成です。 Parental Reflective Functioningとは? この研究で中心となったのが、 Parental Reflective Functioning(PRF) です。 少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、 子どもの行動を、その奥にある気持ち・考え・意図・状態と結びつけて考える力 です。 例えば、子どもが突然おもちゃを投げたとします。 そのとき、 「また投げた!」 「何度言ったら分かるの!」 と、行動だけを見ることもできます。 一方で、 「何があったんだろう?」 「終わりにしたくなかった?」 「うまく言葉で伝えられなかった?」 「疲れていた?」 「助けてほしかった?」 と考えてみる。 もちろん、本当の理由は本人にしか分からないこともあります。 だから大切なのは、 子どもの気持ちを当てることではありません。 「こうかもしれない」 「でも違うかもしれない」 と、決めつけずに考えることです。 研究では、保護者にどんな変化があった? この研究では、介入を受けた保護者は待機群と比べて、 ・子どもの内面を考える力・育児に対する自己効力感・感情についての考え方 などに改善がみられました。 また、保護者から見た子どものコミュニケーションや一部の適応行動にも改善が報告されています。 特に、年齢の低い子どもの保護者で効果が目立っていました。 「正しい対応を教える」だけではない保護者支援 これまでの保護者支援では、 「○○したときには、こう対応しましょう」 という形が多く使われてきました。 それ自体は大切です。 ただ、子どもの行動は、毎回同じ理由で起こるとは限りません。 例えば「叩く」という同じ行動でも、 ・欲しいものを取られた・言いたいことが伝わらなかった・予定が変わった・相手に近づきたかった・もう限界だった・やめてほしかった など、背景は違います。 背景が違えば、必要な支援も変わります。 だから、 対応方法を覚えるだけでなく、その子の行動の背景を読み解く力も育てる。 これが、これからの保護者支援でとても大切だと考えます。 例えば「叩く」をどう見るか 子どもが友達を叩いたとします。 もちろん、叩く行動自体は止めます。 安全を守ることが最優先です。 その上で、 「なぜ叩いたのか」 を考えます。 ①「返して」が言えなかった おもちゃを取られた。 でも、 「返して」 と言えない。 その代わりに手が出た。 この場合に必要なのは、 「叩かない!」 と繰り返すことだけではありません。 「返して」と伝える方法を教えること かもしれません。 ②遊びをやめたくなかった 「もう終わり」 と言われた瞬間に叩いた。 この場合は、 切り替えの難しさが背景にあるかもしれません。 必要なのは、 見通しを作ったり、 「あと1回」 という終わり方を教えたりすることかもしれません。 ③しんどさが限界だった 騒がしい場所。 人が多い。 長時間がんばった。 そこで最後に手が出た。 この場合、 叩く直前だけを見ても原因は分かりません。 その前から負荷が積み重なっていなかったか を見る必要があります。 「子どもの気持ちを当てる」ことが目的ではありません ここは、とても大切です。 子どもの行動を見て、 「あなたはこう思ったんでしょ」 と決めつけることがPRFではありません。 むしろ、 「もしかして○○だった?」 「それとも違う?」 と考えることです。 親だからといって、子どもの気持ちを全部分かる必要はありません。 大切なのは、 分からないことを、分からないまま考え続けること。 「この子のことは全部分かっている」 と決めつけるより、 「何が起きているのだろう?」 と考えられる方が、子どもを丁寧に見ることにつながります。 保護者が「自分で考えられる」ようになる支援 保護者支援で大切なのは、 毎回、 「先生、今回はどうしたらいいですか?」 と答えをもらうことだけではないと思っています。 最終的には保護者自身が、 「今回は、言葉で伝えられなかったのかな」 「いつもより疲れていたかもしれない」 「今日は見通しがなかったから荒れたのかな」 と、子どもの行動を整理できるようになる。 そして、 「では次は、これを試してみよう」 と考えられる。 そこまでいくと、家庭で新しい問題が起きたときにも対応しやすくなります。 クローバーでも「行動の背景」を大切にしています 発達支援教室クローバーでも、 「問題行動をなくす」 だけを目的にはしていません。 例えば、かんしゃくがあるときには、 「かんしゃくを止めるにはどうするか」 だけではなく、 ・伝えたいことが伝えられているか・見通しが持てているか・待つことが難しいのか・切り替えが難しいのか・助けを求める方法を知っているか などを見ていきます。 そして、 その子に必要な、 「伝える」 「待つ」 「切り替える」 「助けを求める」 といった力を少しずつ増やしていきます。 保護者の方にも、 「今回の行動は、何が背景にありそうか」 を一緒に考えていただきます。 まとめ|行動を見るだけでなく、その奥を見る 子どもが、 叩く。 投げる。 泣く。 怒る。 逃げる。 拒否する。 同じことを繰り返す。 そんなとき、 行動だけを見て、 「どうやってやめさせよう」 と考えたくなります。 でも、その前に一度、 「この子に、何が起きているのだろう?」 と考えてみてください。 そこに、 伝えられない気持ち。 見通しのなさ。 困りごと。 不安。 疲れ。 助けを求めるサイン。 が隠れているかもしれません。 対応方法を覚えるだけでなく、その子の行動の背景を読み解く力も育てる。 これからの保護者支援で、私はこの視点を大切にしていきたいと考えています。 お子さんの行動の「なぜ?」を一緒に整理します 「何度言っても同じことをする」 「かんしゃくの理由が分からない」 「叩く・投げるがなかなか減らない」 「いろいろな対応を試したけれど、うまくいかない」 そんなとき、 対応方法を増やす前に、 その行動がなぜ起きているのか を整理すると、見えてくるものがあります。 発達支援教室クローバーでは、お子さんの様子とご家庭での状況を一緒に整理し、 「何が背景にあるのか」 「今、何を身につけると生活が楽になるのか」 「家庭では何を試すのか」 まで具体的に考えます。 → 発達支援教室クローバー「アセスメント&アドバイス」へ 参考文献 Enav Y, Kirsman N, Erhard Weiss D, Mayer Y.Seeing the Child Within: A Randomized Controlled Trial of Reflective Functioning Intervention for Parents of Autistic Children.Autism Research. 2026;19(8).DOI: 10.1002/aur.70301

