お役立ち情報

2025.12.17

健常な共感の発達とポイント

共感の発達段階

子どもの共感性は、段階を経て発達していきます。以下に、一般保護者向けにわかりやすくまとめた10段階の発達表を示します。


第1段階:表情への気づき(0〜3か月)

この時期のようす

  • 人の顔をじっと見つめる
  • あやされると笑う
  • 親の声を聞くと動きが止まる

ポイント 赤ちゃんは生まれてすぐから、人の顔に興味を持っています。まだ「相手の気持ち」はわかりませんが、人と関わる準備が始まっている時期です。たくさん顔を見せて話しかけてあげましょう。


第2段階:感情の読み取りの芽生え(4〜6か月)

この時期のようす

  • イナイナイバーをすると喜ぶ
  • 親しみの顔と、怒りの顔の違いがわかる
  • 歌うとじっと聞き入り、目や口を見つめる

ポイント 表情から「なんだか違う」と感じ取れるようになってきます。楽しい顔・怖い顔の区別ができるようになる大切な時期です。笑顔でたくさん関わりましょう。


第3段階:相手の感情に反応する(7〜12か月)

この時期のようす

  • 親の話し方で、感情を聞き分ける(禁止など)
  • 拍手などの身振りをまねる
  • 親の話しかけに応えようとする
  • 褒められると同じことを繰り返す
  • おもちゃを取り上げられると不快をあらわす

ポイント 親の「嬉しい」「ダメ」などの感情を声や表情から読み取れるようになります。褒められると喜び、また同じことをしようとします。相手に合わせようとする心の芽が育ち始めています。


第4段階:相手の反応をうかがう(1歳〜1歳半)

この時期のようす

  • 親の反応をうかがいながら、いたずらをする
  • 難しいことに出会うと、助けを求める
  • 簡単な手伝いをしようとする
  • 「やって」と頼める

ポイント 「これをしたらお母さんはどうするかな?」と相手の反応を予測して行動できるようになります。お手伝いをしようとするのも、相手に喜んでもらいたい気持ちのあらわれです。


第5段階:自分と相手は違うことがわかる(1歳半〜2歳)

この時期のようす

  • 友だちにおもちゃを貸してあげる
  • 「熱い」「冷たい」「怖い」がわかる
  • 自分より年下の子どもにちょっかいを出す
  • 友だちと手をつなげる

ポイント 「自分」と「相手」が別々の存在だと気づき始めます。だからこそ**「貸してあげる」ができる**ようになります。また、自分の感覚を言葉で表現できるようになり、共感の基盤ができてきます。


第6段階:相手の気持ちを想像し始める(2〜3歳)

この時期のようす

  • 友だちとケンカをすると親に言いつけにくる
  • 買ってほしい物があっても、言い聞かせれば我慢できる
  • ままごと遊びで何かの役を演じる
  • 「よい・悪い」がわかる

ポイント ごっこ遊びを通して、他の人の立場になってみる練習が始まります。「お母さん役」「赤ちゃん役」を演じることで、相手の気持ちを想像する力が育ちます。我慢ができるようになるのも、「相手の言うことを理解した」からです。


第7段階:社会的な気持ちの理解(3〜4歳)

この時期のようす

  • 自分が作ったものを見せたがる
  • 褒められると、もっと褒められようとする
  • 順番を自分から待てる
  • 知らない人に注意されたらすぐにやめる
  • 「くやしい」「約束」がわかる

ポイント **「認めてほしい」「褒めてほしい」**という気持ちが強くなります。これは相手がどう思うかを意識している証拠です。また、順番を待てるのは、相手にも順番があると理解できるからです。「くやしい」という複雑な感情もわかるようになってきます。


第8段階:思いやりの行動(4〜6歳)

この時期のようす

  • 小さい子の世話をする
  • 表情から気持ちを読み取る
  • 場面を想像して気持ちを言葉で表現できる
  • 「親切」「勝ち・負け」がわかる
  • グループの中で妥協しながら遊ぶ

ポイント 思いやりの行動が具体的にできるようになります。「あの子は悲しそう」「困っているみたい」と、相手の内面を読み取って助けようとします。グループ遊びの中で譲り合う経験も、共感力を育てます。


第9段階:相手の立場に立って考える(6〜10歳)

この時期のようす

  • かわいそうな話を聞くと涙ぐむ
  • 相手の立場や気持ちを考え、困ることや無理な要求をしない
  • 年下の子どもの世話や子守を任せられる
  • 幼児や老人をいたわることができる
  • 「勇気」「無駄」がわかる

ポイント 物語を聞いて泣けるのは、登場人物の気持ちを自分のことのように感じられるからです。これが真の共感です。「相手が困るからやめよう」と考えて行動できるようになり、弱い立場の人をいたわる心も育ちます。


第10段階:成熟した共感(10歳以上)

この時期のようす

  • 相手の立場を考えて話すことができる
  • 目上の人には丁寧な言葉が使える
  • 相手によって言葉遣いを変えられる
  • 新聞やニュースに関心を持つ
  • グループで計画を立てて実行できる

ポイント 相手の立場や状況に合わせて言葉や態度を調整できるようになります。これは高度な共感力であり、社会で生きていく上での大切な力です。社会的な出来事にも関心を持ち、自分とは違う立場の人にも思いを馳せられるようになります。


共感を育てるために大切なこと

1. 安心できる関係をつくる

子どもは安心できる関係の中で相手の気持ちを感じ取る力を育てます。まずは親子の間で「わかってもらえた」という体験をたくさん積み重ねましょう。

2. 子どもの気持ちを言葉にしてあげる

「悲しかったね」「嬉しいね」と代弁してあげることで、子どもは自分の感情を理解し、やがて相手の感情も理解できるようになります。

3. ごっこ遊びを楽しむ

ままごとやヒーローごっこなど、役になりきる遊びは共感力を育てる最高の練習です。一緒に遊んであげましょう。

4. 絵本の読み聞かせをする

登場人物の気持ちについて「どう思う?」と一緒に考えることで、他者の視点を取る練習ができます。

5. 焦らず見守る

共感性の発達には個人差があります。周りと比べず、その子のペースを大切にしましょう。


発達の目安(まとめ表)

段階年齢の目安キーワード
10〜3か月人の顔に興味を持つ
24〜6か月表情の違いに気づく
37〜12か月親の感情を読み取る
41歳〜1歳半相手の反応を予測する
51歳半〜2歳自分と相手は違うとわかる
62〜3歳ごっこ遊びで役を演じる
73〜4歳認めてほしい気持ちが育つ
84〜6歳思いやりの行動ができる
96〜10歳相手の立場に立てる
1010歳以上相手に合わせて調整できる

注意: これらは目安であり、お子さんによって発達のペースは異なります。「できない」ことを心配するより、日々の関わりの中で少しずつ育てていくことが大切です。


参考資料

  • KIDS 乳幼児発達スケール
  • S-M社会生活能力検査