2026.04.10
「通じ合う瞬間が増えるとき――やりとりが育つと、親子の毎日はどう変わるか」
「おいで」と言えば来てくれる。「ありがとう」と言ってくれる。
歯医者では、口を開けたまま診てもらえた――。
そんな、当たり前のようでいて、ずっと待っていた出来事が、少しずつ増えていく。
そこには、特別な魔法ではなく、やりとりと、言葉が育っていく時間がありました。
ある家庭では、こんな変化が報告されています。
「ラーメンできるよ」と声をかけると、すぐに寄ってくる。食べ終わったあと、片づけに向かう。「食べられる?」と聞くと、量が多かったのに「ぜんぶ」と答えた。
歯科医院では、レントゲン撮影ができ、診療のために口を開けたまま過ごせた。
帰り際には「ありがとうございます」と言葉が出た。
親御さんは「通じ合えてうれしい」「言っていることがわかるようになってきた」と感じています。
子どもにも大人にも、日々の中には「伝わらない」「言葉にならない」瞬間が何度もあります。
そのなかで、短い言葉・きまりのあるやりとり・体が覚える流れが少しずつ増えていくと、こんな変化が起きやすくなる、というお話をよく伺います。
ひとりひとりのペースは違って当然ですし、「今日はできて、明日は難しい」も、よくあることです。
ここで大切にしたいのは、伸びしろを急かすことではなく、通じ合えた瞬間を、一緒に味わうことです。
親御さんのなかには、「やりとりや言葉が増えると、つい怒ってしまう場面が減ってきたように感じる」と話してくださる方もいます。
それは、親御さんが「強くなったから」だけではなく、お互いにとって世界の見え方が、少し共有されてきたからかもしれません。
発達の個性については、専門家の見立てや環境づくりとあわせて考えることが大切です。
私たちは、「お母さんひとりの努力のしわ寄せ」にしないことを大切にし、理解ある伴奏者として寄り添います。
発達に凸凹がある子を育てるお母さんが、孤立せず、自分の人生も少しずつ楽しめる。
大人になってからも、周囲と通じ合い、穏やかに過ごせる土台づくりに、支援がお役に立てれば――。
「発達障害の子の親=ずっと苦労ばかり」「将来はすべて親の負担」といった、ひとつの絵に閉じ込めない。
せめてかかわりや生活は、今よりちょっと楽になる。そんな「新しい日常」を、一緒に探していければと考えています。