2026.09.23
「相手が嫌がっているのに、やめられない」
「お友達が怒っているのに、なぜ怒っているのか分からない」
「何度説明しても、人の気持ちが分からないように見える」
そんな様子があると、
「この子は人の気持ちが分からないのかな」
「思いやりがないのでは?」
と心配になる保護者の方もいると思います。
でも、まず知っておいてほしいことがあります。
人の気持ちを理解する力は、一つの能力ではありません。
相手の表情を見る力。
その場で何が起きているかを見る力。
自分とは違う考え方があると気づく力。
言葉の裏にある意味を考える力。
そして、分からないときに相手に確認する力。
こうしたいくつもの力が組み合わさって、私たちは「相手の気持ち」を理解しています。
発達特性のある子どもの中には、その一部分に苦手さがある子がいます。
だから、「もっと人の気持ちを考えなさい」と何度注意しても、なかなかうまくいかないことがあります。
必要なのは叱ることではなく、
どこで分からなくなっているのかを見つけ、具体的に教えることです。
今回は、家庭でもできる5つの練習を紹介します。
最初に増やしたいのが、「気持ちを表す言葉」です。
たとえば、
「うれしい」
「悲しい」
「怒っている」
だけではありません。
「悔しい」
「恥ずかしい」
「困った」
「びっくりした」
「心配」
「がっかりした」
「嫌だった」
「迷っている」
など、人の感情にはたくさんの種類があります。
子ども自身が経験した場面で、
「負けて悔しかったね」
「急に予定が変わって困ったね」
「できるか心配だったんだね」
と、大人が気持ちと言葉を結びつけていきます。
ポイントは、
「あなたはこう思ったでしょ」と決めつけないこと。
「悔しかった?」
「嫌だった?」
「それとも違う?」
と確認します。
自分の気持ちを言葉にできることは、他人の気持ちを考える土台にもなります。
「この顔はどんな気持ち?」
という表情カードの練習もあります。
もちろん、それも一つの方法です。
ただ、実際の生活では、顔だけを見て人の気持ちを判断しているわけではありません。
たとえば、
A君が一生懸命作っていた積み木を、B君が間違えて壊してしまった。
A君は何も言わず、下を向いている。
このとき、
「どんな顔?」
だけではなく、
「その前に何があった?」
「A君は何をしていた?」
「それが壊れたら、どんな気持ちになる可能性がある?」
と、状況と気持ちをセットで考えます。
人の気持ちを理解するのが苦手な子では、相手の顔より先に「自分がしたいこと」に注意が向いていることもあります。
そんなときには、
「相手を見なさい」
だけではなく、
人を見る→状況を見る→起きたことを整理する
という順序そのものを教えていきます。
人の気持ちを理解するときに難しいのが、
自分が知っていることと、相手が知っていることは違う
という部分です。
家庭では簡単なクイズにできます。
たとえば、
お母さんが見ていないところで、お父さんがお菓子を冷蔵庫から棚に移したとします。
そこで、
「お母さんは、お菓子がどこにあると思っているかな?」
と聞いてみます。
大切なのは正解させることではありません。
「あなたは棚に移したのを見たよね」
「でも、お母さんは見ていなかったね」
「だから、知っていることが違うんだね」
と整理します。
ほかにも、
「私はイチゴが好きだけど、あなたはブドウが好き」
「同じものを見ても、好きな人と嫌いな人がいる」
など、普段の生活の中で、
人によって考え方や感じ方が違う
という経験をたくさん作ります。
ここは、とても大切です。
私たち大人でも、人の気持ちを100%正確に読み取ることはできません。
ですから、
「ちゃんと相手の気持ちを読みなさい」
だけを目標にすると苦しくなります。
むしろ覚えてほしいのは、
分からないときには確認していい
ということです。
「嫌だった?」
「まだ使ってる?」
「一緒にやっていい?」
「どうしてほしい?」
こうした言葉を、具体的に練習します。
これは、人の心を読む練習というより、
人間関係で困ったときに確認する力を育てる練習です。
実生活では、こちらの方が役に立つことも少なくありません。
友達とのトラブルが起きたとき、
「なんでそんなことしたの?」
「相手の気持ちを考えて!」
と聞いても、本人には分からないことがあります。
そんなときは反省させるより、
紙に簡単な絵を描いて整理してみます。
①何があった?
②あなたは何をしたかった?
③相手は何をしたかった?
④相手は何と言った?
⑤次に同じことがあったらどうする?
この5つです。
たとえば、
「一緒に遊びたかった」
↓
「急におもちゃを取った」
↓
「相手が怒った」
のであれば、
次回の作戦を、
「貸して」
ではなく、
「一緒にやってもいい?」
にする。
それだけでも構いません。
大切なのは、
「悪かったこと」を何度も確認するのではなく、「次に使える行動」を一つ増やすことです。
同じように、
「お友達とうまく関われない」
という子でも、理由は違います。
・相手の表情に気づきにくい
・自分が遊びたい気持ちが強く、相手を見る余裕がない
・言葉の意味を文字通り受け取りやすい
・遊びのルールが分からない
・どう声をかければいいか分からない
・嫌がっているサインが分からない
・自分の気持ちを止めることが難しい
・緊張すると、覚えていた方法が使えなくなる
など、さまざまです。
ですから、
「人の気持ちを理解する練習をすればいい」
だけでは不十分なことがあります。
まず、その子がどの段階で困っているのかを見ることが重要です。
絵カードを見れば答えられる。
家で聞けば分かる。
でも、実際に友達と遊ぶとうまくできない。
これは珍しいことではありません。
実際の友達関係では、
話を聞く。
表情を見る。
周囲を見る。
自分の気持ちを抑える。
返事を考える。
相手の反応を見る。
といったことを短い時間に同時に行わなければなりません。
そのため、机の上で覚えたことを、実際の生活の中で使えるようにしていく練習も必要です。
子どもが人の気持ちを理解できないように見えるとき、
「もっと人の気持ちを考えなさい」
だけでは、どうすればいいか本人には分からないことがあります。
家庭では、
1.気持ちを表す言葉を増やす
2.表情だけでなく状況から考える
3.自分と相手は違うことを経験する
4.分からなければ確認する方法を教える
5.トラブルを次の作戦に変える
この5つから始めてみてください。
そしてもう一つ大切なのは、
できない行動だけを見ず、「なぜできないのか」を見ることです。
友達関係のトラブルが続く場合、
同じ「人の気持ちが分からない」という状態でも、必要な支援は一人ひとり違います。
発達支援教室クローバーでは、実際のお子さんの様子を見ながら、
「どこにつまずいているのか」
「今、何を練習すると生活が楽になるのか」
を整理していきます。
家庭でいろいろ試しているけれどうまくいかない、
友達とのトラブルが増えてきた、
園や学校での人間関係が心配、
という場合には、一度お子さんの行動を整理してみることをおすすめします。
「大人や年下とは遊べるのに、同年代になるとうまくいかない」という子には、年齢の近い相手だからこそ必要になる力があります。
人と同じものを見る、相手の興味に気づく――こうした力は、会話や友達関係の土台になります。
「人の気持ちが分からない」と見える子でも、
・相手の表情に気づきにくい
・その場の状況を読み取ることが難しい
・自分と相手の考えが違うことに気づきにくい
・どう声をかければいいか分からない
・分かっていても、その場では行動できない
など、困っている場所は一人ひとり違います。
そのため、同じ練習を繰り返すだけでは、なかなか変わらないこともあります。
発達支援教室クローバーでは、お子さんの実際の様子を見ながら、
「どこでつまずいているのか」
「今、何を教えると生活が楽になるのか」
を整理して支援しています。
何度説明しても同じトラブルが続く、友達関係が心配、家庭でどう教えたらいいか分からないという場合は、一度ご相談ください。