2026.10.20
「言葉を増やすには、何をしたらいいですか?」
「人に興味がないように見えます」
「一人遊びはできるけれど、一緒に遊ぶのが難しいです」
そんな相談の中で、とても大切になる力があります。
それが、
ジョイントアテンション(共同注意)
です。
難しそうな言葉ですが、
簡単に言えば、
「誰かと一緒に同じものを見る力」
です。
ただ同じ方向を見るだけではありません。
「私も見ているよ」
「あなたも見ているね」
と、お互いに共有していることがポイントです。
子どもが犬を見つけます。
犬を見る。
お母さんを見る。
また犬を見る。
指を差して、
「ワンワン!」
と言う。
お母さんも、
「いたね!」
と犬を見る。
これがジョイントアテンションです。
子どもと大人が、
同じものについて気持ちや興味を共有しています。
言葉は、
物の名前を暗記するだけで育つわけではありません。
例えば、お母さんが空を指差して、
「飛行機!」
と言ったとします。
子どもが、
お母さんの指差しを見る。
その先を見る。
飛行機を見る。
「飛行機」という言葉を聞く。
こうして、
言葉と対象がつながります。
つまりジョイントアテンションは、
人から情報を受け取るための土台
でもあります。
American Academy of Pediatricsも、共同注意を、後のコミュニケーションや社会的関係につながる重要な基礎的能力と位置づけています。
お母さんが、
「あっ!」
と指差す。
子どもがその方向を見る。
これは、
相手の共同注意に応じる力
です。
子どもが面白いものを見つける。
お母さんを見る。
指差す。
「見て!」
と言う。
これは、
自分から共同注意を始める力
です。
こちらは特に、
「これ面白いよ」
「一緒に見よう」
という気持ちの共有に関係します。
例えば、
棚のお菓子を指差す。
これは、
「取って」
という要求かもしれません。
一方、
空を飛んでいる飛行機を指差して、
お母さんの顔を見る。
これは、
「見て!」
という共有です。
どちらも大切なコミュニケーションですが、
目的が違います。
人が見ているものに注意を向けられると、
言葉の意味を学びやすくなります。
見る。
相手を見る。
また物を見る。
という行き来は、
後の、
話す。
聞く。
返す。
というコミュニケーションにもつながります。
一緒に車を見る。
一緒に転がす。
笑う。
また遊ぶ。
こうした共有から、二人遊びが育っていきます。
友達関係では、
「相手は何を見ている?」
「何に興味を持っている?」
「今、みんなは何をしている?」
という力が必要になります。
ジョイントアテンションは、こうした社会的なやり取りの基礎の一つです。
例えば、
・一人で遊んでいることが多い
・「見て!」が少ない
・指差しが少ない
・大人が指差しても見ない
・面白いものがあっても人に知らせない
・人の顔と物を見比べることが少ない
といった姿があります。
ただし、
これだけで自閉症と判断することはできません。
発達全体やコミュニケーション、行動などを総合的に見る必要があります。
まず、
大人が見せたいものを見せるのではなく、
子どもが今見ているものに入ります。
車を走らせているなら、
横に座る。
同じ車を見る。
「ブーン」
と声を添える。
子どもがこちらをちらっと見たら、
笑顔で返す。
「大人を見ると楽しいことが続く」
という経験を作ります。
面白いものを見つけたら、
「あ!」
「見て!」
と指差します。
ただし、
無理に顔をこちらへ向けたり、
「こっち見て!」
と何度も要求する必要はありません。
子どもが興味を持ちやすいものから始めます。
子どもが、
物を持ってくる。
指差す。
こちらを見る。
そんなときは、
「ほんとだ!」
「大きいね!」
「動いた!」
と返します。
「人と共有すると楽しい」
という経験を積み重ねます。
くすぐり。
いないいないばあ。
シャボン玉。
ボール。
歌。
子どもが好きな活動の中で、
大人を見る。
活動を見る。
また大人を見る。
という行き来が生まれやすくなります。
ジョイントアテンションというと、
「目を合わせなければ」
と思うことがあります。
でも目的は、
アイコンタクトそのものではありません。
目的は、
「一緒に楽しい」
「一緒にびっくりした」
「これ見て!」
という共有です。
視線だけではなく、
指差し。
身振り。
声。
体の向き。
さまざまな方法があります。
自閉スペクトラム症の幼児を対象にした研究では、保護者を介した共同注意・遊びへの支援によって、joint engagementや共同注意行動が改善したRCTも報告されています。
AAPも、保護者が日常の遊びの中で子どもの興味に入り、共同注意や双方向のやり取りを促す方法を紹介しています。
大切なのは、
特別な教材を使うことだけではありません。
毎日の遊びの中に、人と共有する経験を増やすことです。
ジョイントアテンションとは、
単に同じものを見る力ではありません。
「あなたも見ている。私も見ている。それを一緒に楽しんでいる」
という共有の力です。
この力は、
言葉。
コミュニケーション。
遊び。
友達関係。
につながる大切な土台の一つです。
だから、
「言葉を言わせよう」
とする前に、
「一緒に見る」
「一緒に楽しむ」
「子どもの興味に入る」
という関わりを増やしてみてください。
発達支援教室クローバーでは、
指差しだけを見るのではなく、
「人を見る?」
「共有する?」
「要求はできる?」
「大人の働きかけについてこられる?」
など、実際のやり取りを細かく見ます。
そして、
今のお子さんに何を増やすと、次の発達につながるのかを整理します。
American Academy of Pediatrics
Joint Attention: What Is It and Why Is It Important?
American Academy of Pediatrics
ASD—Joint Attention Skills
American Academy of Pediatrics
Identification, Evaluation, and Management of Children With Autism Spectrum Disorder